日本菌学会第51回大会に参加して

文/買うとく

 

 「ここのキヌガサタケは卵が赤くて、グレバはいい匂いがする」

キヌガサタケを見たことがなかった私を発生地に案内してもらったときにさんじょう氏が私に放った言葉でした。

そのときは「へぇ〜そうなんだ」とその言葉の重要性を理解していませんでした。確かにいくつかの図鑑を見ると「卵は白くてグレバは臭い」と書かれています。

その後も追跡を続けた氏は筑波大学の学生にして「教授」と言われている糟谷大河氏との共同発表でこのキヌガサタケをそれとは別種の

「日本産アカダマキヌガサタケPhallus rubrovolvatusの形態、生息地環境と発生時期」

というタイトルでつくばにて行われた日本菌学会第51回大会でポスター発表することになりました。

 しかし、私たちのような地方のきのこの会からすると日本菌学会それはとてもおそろいしい所に思えてなりません。そんなところにさんじょう氏1人で乗り込むには危険すぎます。助手として私がついて行くことになりましたが、私一人では頼りないというよりも男2人旅というのもなかなかきついものがありましたので新入会員のO田女史にも同行していただきました。

 

26日(土)の昼頃に筑波大学に到着したのですが筑波大学の広さにはびっくりです。徒歩だと時間がかかってしかたがありません。大学内なのにバスで移動です。途中のバスの中で出合った大久保彦氏(ウロイボセイヨウショウロをポスター発表)の話しでは全国で2番目に大きい敷地とのことでした。

 

 

道中出合ったきのこの置物1

道中出合ったきのこの置物2

 

菌学大会ということで、スーツを着ている人ばかりで堅苦しい感じかなと思っていたのですが、会場が大学ということもあり、私服の人も多かったので、以外に堅苦しくはなくて「おそろしい所」には感じません。まずは受付を済ませてシンポジウムがある2階の会場に上がると、どこかで見たことがある人がいました。当会でも数人お世話になっている某菌類洋書専門店さんで、お勧めの本の展示販売されていました。商売上手な店主さんに

「この本はいい!買うべきです」

「菌類を勉強しているみんなのために言っているんです!」

と勧められて英語ができないにもかかわらずまた洋書を購入してしまいました。

 

 日本菌学会というだけあってキノコ以外の菌類のこともたくさんあります。菌類関連のシンポジウムを聞いていましたが、菌類とキノコは違うなと身にしみて(体が睡魔を要求します)感じたので会場を抜け出した所、山上氏も同じく身にしみて感じようで会場外にいました。私たちは菌類屋ではなくきのこ屋のようです。

時間がもったいないので2人でポスター展示が行われる会場に行こうとしたところ、念願だった北陸のきのこ図鑑の執筆者の池田良幸先生にばったり出会い、お話をさせていただきました。

 シンポジウムも終わり、その後は懇親会がありました。100名以上は参加していたようです。

宴席中はつくば大学の学生さんによる余興がありましたが、一番の衝撃はMs. Nedaでした。おもわず見とれてしまい、写真を撮るのを忘れてしまったのが悔やまれます。

 

懇親会の料理はビュッフェ形式

つくば大学の食堂にて行われました

乾杯前のあいさつ

海外から来られた有名な先生のようです

 

乾杯後の様子

某菌類洋書専門店の店主さんも写っているようです。その隣りにはさんじょう氏も!

 

 

懇親会の後はアマチュアきのこの人のための2次会がありました。

きのこ屋にとってはこちらのほうが大事かもしれません。

 

菌類懇話会

千葉菌類談話会

埼玉きのこ研究会

石川きのこの会

 

 27日(日)が今回のメインです。

キノコ関連の一般講演をいくつか拝聴させていただきましたが、その中で特に興味深かったのは以下の2つです

Polyporus(担子菌類サルノコシカケ科)及び近縁属の分子系統学的研究」 演者/早乙女梢

「本邦産アカキクラゲ目菌類の系統分類−Dacrymyces属の多系統性−」 演者/白水貴

両者ともプレゼンが非常に上手で聞いていて抵抗なく話が頭に入っていきました。分子系統ということで分かりにくいかと思ったのですが、両者に共通するのはDNA解析を行い、その系統関係から肉眼的に共通する部分を見つけ出そうとしているところに感銘を受けました。

DNAが共通するからこれとこれは同じ属」と言われても肉眼的に共通する部分がなければアマチュアは困りますよね。まだ、まだ分からない部分もあるといことですが今後の研究が非常に楽しみです。

 

さてさてさんじょう氏はというとほとんどポスターの前でほとんど張り付いた状態で見学している人に熱心に説明されていたようです。

「立ちっ放しは疲れる」といいながらもどこか充実したようでした。

さんじょう氏以外の発表の中でにとくに興味深かったポスター展示は新種・新産種報告の以下の2点です。

「北日本産ヌメリガサ科菌類に関する研究」 工藤伸一・長沢栄史

「大分県で発表された日本新産種 Cystorderma tricholomoides について」 村上康明

大分県、北日本ともに兵庫県からは遠くて同じものが見つかる可能性は低いかもしれませんが、それは今後の私たちの県内での活動しだいというところでしょうか。

 

ポスター展示を見入る参加者 

自由に見ることができます

 

ポスターの前で説明をする発表者もいます

ポスターの前で説明をするさんじょう氏

 

笑顔で接客

 

 

最後の閉会式には残念ながら飛行機に間に合わないので、時間の関係で早々とつくばを後にしました。

第52回大会(来年)は三重県で開催されるようです。つくばに比べれば格段に近いので来年も参加できれば、欲を言えば何かネタを作ってポスター展示できればといいなと思いました。そのためにはもっと頑張らなくはいけませんが・・・。

 

帰りの道中、当会の千葉県支部長?のK田氏の奥さんから「飛行機が飛んでないようだけど大丈夫?」との連絡があり「えっ!」とあせりました。とりあえず、羽田空港に向かって状況を確認したところ、ANAの飛行機が飛んでいないということでした。私たちのチケットはスカイマークなので安心です。ところが、受付嬢の御方が「金は払うので神戸まで新幹線を使って欲しい」とおっしゃるではありませんか。どうやらANAで乗れなかったかたを少しでもスカイマークで引き受けたいらしく、新幹線で帰れる人はそちらでお願いしているようでした。今更、東京駅まで引き返すのはいやなので、「無理です!」と強く言ったところ、無事飛行機に乗ることができました。それからは何事もなく、無事帰路につきました。

 

  今回の旅で、当会の千葉県支部長?のK田氏には大変お世話になりました。いつもお世話になりっぱなしで申し訳ありません。

といいながらも、また、近くに行くことがあればお邪魔させていただきます。

 

千葉県支部長?のK田氏

雨の中フィールドを案内していただきました

K田氏の奥さん

顔を出すと怒られそうなので後ろ姿でご勘弁を