日本菌学会第54回大会(東京 玉川大学)に参加して


by A.Okuda

 去る5月29日、30日、東京都は玉川大学にて日本菌学会第54回大会が行われました。
今年の私の使命は御影高校の生徒さんの力作である、兵庫きのこ研究会のポスター展示を行うこと。当日の朝早い出発だったために、寝ぼけてどこかに忘れていかないだろうか・・・ととても心配な思いで新幹線に乗り込みました。ポスターの筒を握り締め、幸い新横浜を乗り過ごすこともなく、ややこしい東京の路線に迷うこともなく、無事玉川大学までたどり着きました。

 一日目の朝一番に催された総会はパスさせていただき、その次の受賞講演から聞くこととなりました。私にとって面白かったのは、鳥取大学でお世話になった研究員の谷亀高広氏がされた
「ラン科植物の菌根共生系解明に関する研究」
でした。ラン科植物においてはこれまで知られていなかった菌根共生系が谷亀氏のひたむきなサンプリングから次々と明らかにされてきています。例えばタシロランの菌根からイヌセンボンタケが発生したという話など、植物好きから見てもきのこ好きから見ても面白いのではないでしょうか。やはり研究は時間をかけて着実に!そう思わせてくれる講演でした。

 その後の一般向けのシンポジウムでは菌学会の大御所たちの講演を聞くことが出来ました。写真家としても有名な伊沢正名先生が残念ながらお休みされていたため「糞土研究会」の講演をお聞きすることが出来なかったのは残念でしたが、その代わりに行われた奥田徹先生の講演もカビのことでしたが多種多様な形態の分生子があり非常に興味深かったです。川上裕司先生にはカビとの上手な付き合い方も教えていただきました。


 そして夜は、これが楽しみ懇親会です!ビール片手に、きのこの話に花が咲きました。今年はオークションも行われ、その司会をウエディングドレス姿のMs. Nedaがつとめて下さいました。菌学の洋書や古書や顕微鏡などが出品され、欲しいものが沢山あったのですが、お酒の勢いに負けてはいけないと思い、必死に踏みとどまりました。サイレントオークションもあり、H瀬君は原木を手に入れていました。

毎年恒例のアマチュア二次会は町田の居酒屋で行われました。全国屈指のアマチュアの方々が集まり、情報交換を出来る貴重な場です。といっても酔っていた私は何を話したかほとんど覚えていませんが、一人ひとりの自己紹介の時に兵庫きのこ研究会のポスターの宣伝はして、役割は果たしたと思っています。長澤先生が実は小さなきのこが好きだったというのは意外でした・・・。

 二日目は一日目が遅かったこともあり寝不足でしたが、最初のシンポジウムがアマチュア主催の
「今さら聞けない分子系統入門」
だったので頑張って起きました。安藤洋子さんの
「ホウキタケの分類と系統樹」
でDNAのとり方やその後の処理の手法を詳しく教えていただいた後、科博の保坂健太郎氏の
「DNAで本当に菌類の進化が解るのか?」
と東大の奈良一秀先生の
「菌根菌の生態研究と分子系統解析」
で実際にDNAを使った研究のお話を聞きました。さすが第一線で活躍されている方の話というだけあり、深い内容でした。DNAを使えば何でも解ってしまうというわけではありません。解析法や解釈などにより色々とバイアスがかかってしまうもので、諸刃の剣でもあります。同時に今まで解らなかったことがDNAを使うことで一気に解ってきたという例もあります。DNAをどこまで信頼して利用するか。菌類の研究をする人はその判断が不可欠な時代になっていると感じました。

 その後ポスターセッションがあり、多くの方に兵庫きのこ研究会のポスターを見ていただきました。皆さん口をそろえて高校生の作ったポスターとは思えないと言われ、(特にキャラクターのウケが良かったです)持って行った私も鼻高々でした。

 午後は一般口頭発表が行われました。私は生態や分類のセッションに行ったのですが、DNAの使用頻度は皆さん様々で、新しい手法も使われていて、ついていくのがやっとの発表もありました。しかしやはり形態観察は基本の基本です。着実に一つ一つ見ていきたいと思いました。

 残念ながら次の日が仕事だったため最後までいることは出来ず、早目に玉川大学を出発しましたが、新しい人との出会いあり知っていた人との深い交流ありの、意義深い学会でした。来年もぜひ参加したいと思います。(来年は北海道だそうです・・・お金が心配!


Snaps



パネル展示風景から


懇親会風景1


懇親会風景2


懇親会風景3


オークション風景


2次会より1


2次会より2

写真提供 谷口雅仁氏(菌類懇話会)